歯の寿命を延ばすうえでは、「持って生まれた歯をどれだけ残せるか」が重要なテーマとなります。
人間の歯には素晴らしい機能性と耐久性が備わっており、それにはどんなに優れた歯科素材も敵いません。
今回は、なるべく歯を削らないで済む治療法の1つとして、「ドックベストセメント」の仕組みや特徴をご紹介します。
「ドックベストセメント」とは、簡単に言えば「むし歯に感染した部分に塗り薬を塗布し、余分な歯を削らずに治療する」方法です。
銀イオンや銅イオンの殺菌力でむし歯菌を死滅させる方法であり、侵食の多いむし歯にとても大きな力を発揮することから、根幹治療にも用いられます。
主な治療の流れは、以下のとおりです。
むし歯についた汚れを洗浄・消毒するむし歯の部分をなるべく削らずにドックベストセメントを塗布する詰め物をして経過観察を行うむし歯が治癒していることを確認し、最終的な詰め物をして仕上げる |
ドックベストセメントの主成分は天然ミネラルです。
具体的には「酸化亜鉛73%」「酸化マグネシウム6%」「ビスマス5%」「シリカ4%」「酸化鉄3%」「銅2%」「塩化銀1%」などが挙げられます。
ドックベストセメントを用いた治療には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的な5つのポイントをご紹介します。
ドックベストセメントを使うことで、「歯を削らずに済む」あるいは「歯を削る範囲を最小限にとどめられる」といった効果が生まれます。
また、ドックベストセメントを用いた治療には、「神経を抜かずに済む確率が高くなる」という特徴もあります。
神経が残っている歯は、血液から栄養を吸収できるため、丈夫で割れにくいという性質を持ちます。
そのため、歯の寿命を延ばせるのが大きなメリットです。
むし歯が深く、除去すると神経(歯髄)に達してしまうリスクがある場合にはドッグベストセメントの適用となるケースがあります。
ドッグベストセメントの薬効に期待し、むし歯が神経に侵食しない様に塗布します。
塗布後経過を診て効果を発揮した場合は、むし歯の侵食した部分を削ることをなく詰め物(セラミック)などを補綴していきます。
一度詰められたドックベストセメントは、半永久的に銅イオンを放出し続けるため、殺菌力が長続きします。
治療後はセメントを詰め代える必要がなく、永続的にむし歯のリスクが低下するため、費用対効果が大きいのもメリットです。
ドックベストセメントの主成分は酸化亜鉛や酸化マグネシウム、酸化鉄、銅などの天然ミネラルです。
自然の素材のみで生成されており、抗生剤などの薬剤は使われていないため、副作用の心配がないのも大きな特徴といえるでしょう。
ドックベストセメント治療は痛みがほとんどなく、通院回数も少なく済むのが特徴です。
そのため、歯科治療に苦手意識を持っている方でも、比較的に安心して受けることができます。
続いて、ドックベストセメントのデメリットについても見ていきましょう。
ドックベストセメントは保険診療として認可されていないため、自費診療で行う必要があります。
保険適用が可能な通常の治療(むし歯の箇所を削る治療法)と比べると、費用は高額に感じられてしまう方もいるかもしれません。
ただし、「治療時間や治療回数は少なくなるケースが多い」「半永久的に効果が持続する」といった点を踏まえると、コストパフォーマンスに優れた治療法と考えることもできます。
なお、当院でドックベストセメントを行う場合の費用については、こちらのページをご参照ください。
優れた効果を持つドックベストセメントですが、決して万能というわけではありません。
むし歯の状態によっては利用できない場合があったり、多少は歯を削らなければならない場合があったりと、状況に応じた判断が必要となります。
また、金属アレルギーをお持ちの方には適さない場合もあります。
当院でもドックベストセメントを治療法の1つとして取り扱っています。
ここでは、当院の考え方やスタンスについて、簡単にご紹介させていただきたいと思います。
メリットの箇所でご紹介したように、ドックベストセメントにはいくつかの優れた利点があります。しかし、どんなむし歯も塗布するだけで治せる魔法の薬ではありません。
たとえば、すでに神経にまで届いてしまったむし歯には適用できません。
また、ドックベストセメント自体には鎮静効果はないため、すでに痛みが出ているむし歯には使えません。
利用に適さない状態で無理に使おうとしても、期待したような効果が得られないばかりか、そのまま症状が進行してしまう可能性は十分に考えられます。
それだけに、治療の現場においては、「ドックベストセメントが適しているかどうかの見極め」がもっとも重要なカギとなるのです。
こうした理由から、ドックベストセメントの治療を行うなら、経験豊富な歯科医院で診てもらうことが大切であると考えています。
当院でドックベストセメントを利用するパターンとしては、以下のようなケースがあげられます。
1.通常のむし歯治療において、再発の予防を期待して利用するケース 2.むし歯の侵食が深くない状態で、神経を残せる可能性を期待して利用するケース |
1つめのパターンは、通常のむし歯治療において、今後の再発予防を期待して塗布するケースです。
たとえば、治療後に詰めたセラミックが欠けたり外れたりしたとき、患者さまがすぐに歯科へ通えなかった場合を想定すると、あらかじめドックベストセメントを塗布しておいたほうが、相対的にむし歯にはなりにくいと期待することができます。
2つめのパターンは、ある程度むし歯が侵食しているものの、まだ痛みが出ていないというギリギリの状態で使うケースです。
これは、すべての侵食箇所を取り除くと、露髄(神経が露出してしまうこと)してしまう場合に、なんとか神経を保存できる可能性を期待してドックベストセメントを使用するというものです。
うまく薬効が発揮されれば、神経を覆う部分を残しながら治療を終えられるので、歯の寿命を延ばすことができます。
ただし、ドックベストセメントの薬効が作用するかどうかは、もともとの歯や唾液の質といった個人差によって異なるため、必ずしも狙った結果が得られるとは限りません。
そのため、数ヶ月~1年程度の経過観察を行い、じっくりと予後を診たうえで最終的な判断を行うこととなります。
最後に、ドックベストセメントに関するよくある質問をご紹介します。
できるだけ歯を削らずに治療を行えるため、痛みの心配がなく、歯の寿命も延ばせるのがメリットです。また、一度詰め物をすれば、銅イオンによる殺菌効果が半永久的に続くのも特徴です。
ドックベストセメントには天然ミネラルが用いられており、抗生剤などの薬剤は入っていないため、副作用はありません。
保険適用ではないため、通常のむし歯治療と比べると費用は高額になってしまいます。また、すべてのむし歯に使えるわけではないため、利用に適しているかどうかを見極める医師の力量も問われるのが実情です。
ドックベストセメントには、「歯や神経を残せる」「痛みの心配がない」「効果が長続きする」といった優れたメリットが数多く存在しています。
一方、どんなむし歯にも適用できる万能な治療法ではなく、状況によってはその他の選択肢のほうが適しているケースもあります。
それだけに、ドックベストセメントを取り扱うには、「丁寧に状況を把握する」「1人の患者さまにじっくりと向き合う」「その他の選択肢と比較しながら丁寧に説明できる」といった、医師側の力量・人柄が求められるのも事実です。
当院では「完全個室による丁寧なカウンセリング」を実施しており、患者さまとのコミュニケーションを大事にしながら最適な治療法を見つけていく方針をとっています。
ドックベストセメントに関心をお持ちの方は、ぜひ『ザ・デンティスト南青山』までご相談ください。
院長:奥 桃太郎
当院では、保険適用外の治療のみを行っています。 あらかじめご承知おきください。
※初診の際は、ご予約の時間より少し早めにご来院ください。
院内感染防止について細心の注意をはらっております。
安心して治療を受けていただくために治療機器の滅菌処理はもちろんのこと、院内全体に除菌水(EPIOS ECO SYSTEM)を導入しています。